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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
頬が膨れるほど突っ込んでやれば、ようやく吉継は止まる。すると大海はくすくすと笑い出し、呟いた。
「なんだか、夢の続きを見てるみたいだ」
「夢?」
「どんな夢だったかは覚えてないけど、賑やかで、明るくって、すごく楽しかった。いい夢なんて、どれだけ久し振りに見たのかな……」
最近の大海の顔色を見れば、あまり眠れていないのは明らかである。幸せそうに笑う大海を見ていると、いがみ合う気持ちが皆の心から薄れていった。
「ずっと、こんな日が続けばいいのに」
宴の時間は、必ず終わる。慰めの夜が過ぎ朝が来れば、勇気を奮い立ち上がらなければならない。だが夢の名残は、もう少しだけ甘えていたいと思わせた。
佐吉は小さな溜め息を漏らすと、大海の頭をくしゃりと撫でる。
「それくらいの望みなら、いくらでも叶えてやる。馬鹿共の騒がしい言葉も、我慢してやろう」
市松や虎之助も、棘のある言い方に苦い顔をしながらも同意し頷く。続いて、行長も孫六も、忙しく咀嚼したままの吉継も頷いた。
「皆……ありがとう」
今ここには、尾張派も近江派も存在しない。いがみ合っていた六人は、大海を中心に円を作っていた。