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戦国ラブドール
第23章 赤壁の戦い
 
 どんな顔をしていて、どんな声で話すのか。自ら動いたのは、全くのところ好奇心だった。

 だがそれは、曲がり角を曲がった先で不安に変わる。先の道で光る、提灯の明かり。それは遠くから見えるだけでも十を越え、二十はありそうな程集まっていた。そして聞こえてくる、不審な声。主人は提灯の明かりを消して物陰に身を隠しながら、そっとそちらへ近付いた。

 声がはっきり聞き取れる距離まで近付いて、主人は仰天する。一人を取り囲み、襲っているのは紅天狗。最近は身を潜め姿を消していた彼らが、おそらく総勢で集まっていた。

「殺すなよ、このガキは、大事な人質だ」

 さして年のいってない若者の声が、耳に入る。赤い頭巾を被った連中ではなく、一人だけ顔を晒した男が放った言葉のようだった。

 囲まれている者――おそらくは孫六の姿は紅天狗に阻まれて見えないが、たびたび聞こえる男達の悲鳴や怒声からすると、抵抗しているのは違いないようだった。よくよく見れば、近くには頭巾の男が何人も倒れている。おそらくは、孫六が一人で倒したのだろう。

 助太刀するにも、主人では力がない。屋敷へ戻り皆を呼ぼうかと思ったその時、また紅天狗の声が響いた。
 
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