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戦国ラブドール
第23章 赤壁の戦い
「これが、その布です」
商人が差し出した赤い布には、何か記されている。虎之助はそれを広げ、すぐに目を通した。
『加藤孫六は我ら紅天狗の手に落ちた。身柄を無事に返して欲しくば、三日後の丑の刻、歳月寺の跡地にて、秀吉の宝である大喬を寄越すべし。なお、これを断れば、孫六の命はないものと思え』
「あの、屑共め!! 何が紅天狗だ、今すぐ俺がぶっ潰してやる!!」
虎之助は怒りに任せ忌まわしい布を投げ捨てると、床に拳を叩きつける。商人は驚き身を震わせながらも、虎之助に頭を下げた。
「お願いします、必ずあの若武者を助けてくださいませ! あの少年は、町の者にとって、頼れるお侍様なんです。そんな立派な若者が、こんな奴らに殺されたら、あまりに惨い……!」
まるで家族を攫われたかのように心配する商人に、怒り狂っていた虎之助の心が揺れ動く。
一人でずっと悪人退治をしていたらしい孫六。その意図はよく掴めないが、おそらくそれは紅天狗に近付くためである。だが、結果それは不安にかられる民を安堵させ、ひいては秀吉の名誉をも守っている。ただ翻弄されていた自分達よりも、孫六はよほど立派な武士だった。