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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
口に広がる甘味と水分は、疲れた体に染み渡る。頬張る様子を眺めながら、吉継は口を開いた。
「佐吉はね、柿は胆の毒だから嫌いって食べたがらないんだよ」
「その佐吉ってのは、誰なんだい? ちょくちょく耳にしたような気がするけど」
「名前、聞いてなかった? 書庫で会ったでしょ。頭は良いのに態度は悪くて、口も悪くて気の遣えない奴」
あれだけ印象に残る人間を、半日も立たずに忘れる訳がない。大海が頷けば、吉継はくすくすと笑った。
「佐吉の中では女って、議論も出来ず高価な物ばかりねだる穀潰しって生き物らしいんだ。それが君に言い返された事で、少し見方が変わるかも」
「そんな考えで口も態度も悪い奴なのに、友達なのかい?」
「ん? 僕は佐吉が友達だなんて言ってないよ」
「え、でもあんた、佐吉の名前を出すと、すごく優しい顔になるじゃないか」
確かに吉継は佐吉を散々貶しているが、語る笑みや言葉の柔らかさは、とても憎んでいるようには見えない。吉継はますます笑みを深めると、ぺこりと頭を下げた。
「きっとこれから、佐吉と話す機会もあると思うけど……悪気はないって思って接してほしい」