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戦国ラブドール
第3章 佐吉という男
つまりそれは、仲介する秀吉がいなければ、戦を起こす勢いで諍いがあるという事である。実際に兵を持っている訳ではない彼らに出来るのは喧嘩くらいだろうが、秀吉が仲良くしろと念を押すのも当然だろう。小競り合いで済むうちに矯正しておかなければ、未来本当に力を得た時、取り返しの付かない戦になるかもしれないのだから。
「あ、そうだ。その手拭い、洗って返してね。僕は普段そんなに外へ出歩かないから、この部屋に来てもらえると助かるよ」
「あ、ああ。分かった。じゃあ、あたしはもう戻るよ」
「もう暗いから、足元には気を付けて。変な男に絡まれても、ついていっちゃ駄目だよ」
ちゃっかり次に会う約束を取り付けられたと気付かず、大海は部屋を出る。外は暗くなっているが、月を見る限りまだ宵の口だ。小夜もまだ眠りにつくような時間ではない。急いで屋敷へ戻り、部屋の前へ立つ。
「小夜、今帰った――」
襖を僅かに開いたその時、侍女の屋敷にはいないはずの男の声が中から漏れる。そしてその声は、大海にも聞き覚えがあった。
(これは……秀吉!?)
同時に聞こえてくるのは小夜のか細い声。しかしそれは、大海も知らない女の声だった。