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戦国ラブドール
第1章 拐かされた少女達
老人はそう呼びかけながら、勝手に扉を開けて中に入る。慌てて出てきた父親を無視して、老人はずかずかと進んだ。
「ちょっと待っとくれ、村長! うちの娘が必要ってどういう事だ」
姉妹は、二人一緒の部屋で身を寄せ合っていた。月の輪が輝く夜のような黒髪が目を引く、幼い顔立ちの妹、小夜。彼女は大きな瞳を涙で濡らして、白く細い手を姉の背中に回している。まだ14という歳を考えれば、不安がるのも仕方ない事だった。
姉の大海は、夕焼けに染まる海のような髪をした、凛々しい女である。こちらは芯で不安を覚えながらも、妹を慰めるため気丈に振る舞っている。背が高いのは女として多少難点であるが、妹に引けを取らない美しさだった。
「……あたし達を、お侍様に売るんですか」
怯える小夜より、戸惑い追ってくる父親より、誰よりも早く事態を察し冷静な声を上げたのは、大海だった。
「お前達が頷いてくれれば、村は助かるんだ。米も半分は残るし、道具も働き手も皆見逃してくれると。だから、な?」
進軍の道中で見つけた村など、武士にとっては丸々補給地点でしかない。断ればどうなるのか、大海はすぐに悟った。