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戦国ラブドール
第1章 拐かされた少女達
 
「――分かりました、行けばいいんでしょう。ただし、小夜は置いていきます。あたし一人で充分です」

「お姉ちゃん!」

 その言葉に驚いたのは、小夜であった。小夜は取り乱し首を大きく振ると、大海へすがりつく。

「駄目、お姉ちゃんが一人で行くなんて! 私一人で残るなんて嫌だよ!」

「小夜、二人で売られるなら、一人でも残った方がいいだろ? 大丈夫、あたしはあんたと違って丈夫なんだよ」

 小夜を宥めるよう頭を撫でながら、大海は老人へ目を向ける。

「妹は疱瘡により顔が崩れたので、姉だけ連れてきたと話してください。どうか妹の身だけでも――」

 だが大海の願いは、鎧の金属が擦れる音に遮られる。我こそが将だと主張する派手な鎧の武士が、一人で家まで追ってきたのだ。

「娘。嘘をつけば、閻魔に舌を抜かれるぞ」

「――っ」

「拙者が聞いたのは二人、そして見たのも二人。連れて行くのも、二人だ」

 武士は大海の腕を掴み、小夜と共に立ち上がらせる。そして、姉妹の顔を見比べた。小夜は武士よりも頭一つ小さいが、大柄な大海は首を上げなければ視線が合わない。
 
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