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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
「秀吉は、なんて返事をしたんだい?」
「それは、もう大海さんも知っているでしょう? あなたの感じた通りで、間違いないですよ」
やはり、大海が見つけた道がこれだと言えるならば、秀吉は引き止めるつもりはないようだ。元々、大海が子飼いに与えられたのも、若い彼らへ、思い通りにならない現実を知らせるためである。最後に別れを告げる事は、秀吉の目的通りでもあった。
「堺は良いところですよ。この前は虎之助さんに邪魔されて、さほど詳しく案内も出来ませんでしたが……あそこなら、なんの不便もなく暮らせます」
だが、大海は返事をしない。答えが、喉に詰まってしまったのだ。
帰る場所は能登でこそないが、家族揃って暮らせる事。それは大海が望んでやまない夢だった。それが、誰に迷惑をかけるでもなく、手のひらへ転がり込んでいる。本来なら、二つ返事で頷く場面だった。
(このまま……長浜を去って、堺で暮らす。それが、あたしの生きる道なのか?)
だが大海は、ここで出来る事を見つけると秀吉に約束した。それほど遠い訳ではないが、長浜は堺とは全く別の土地である。心に棘が刺さったかのように、大海の胸はちくちくと痛んでいた。