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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
 
 大海は包帯を巻かれた手を握り、思いを馳せる。正義という大義名分に向かって走っていれば、犯罪すら栄達の道に見えるのだろう。賊と武士、立場は違えど、行動に違いはないように思えた。

「豪商の子息でありながら、武士に運命を翻弄された兄弟……なんだか、どこかで聞いたような話だと思いませんか?」

 行長の問いに、大海の心臓が跳ねる。潰れた豪商の幼い息子、鮮やかな赤毛、理不尽への憤り。よくよく考えてみれば、それはまさしく、大海自身を映したような存在だった。

「……あのさ、あいつらの名前って、本名じゃないよね」

「でしょうね。しかし、捕まえた本人達は意識を失ったまま目覚めてませんから、真実は分かりません」

「もしかするとだけど、あいつらって――」

 すると行長は、大海の唇に人差し指を当てて止める。

「だから、面白くない話だと言ったでしょう? それに……奴らが何者であれ、起こした事は許されません。人を恨み迷惑を掛けた時点で、可哀想な子どもは、ただの賊になったんですから」

「けど……あれは、あたしの未来だったのかもしれない。どこかで間違えば、あたしも」

「そんな事はありませんよ、大海さん」
 
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