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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
「分かった、しっかり覚えておく。神はどうだか分からないけど、あんたの心は温かかったってね」
大海が差し出した十字は、大海の手のひらでさらに温まっている。行長はそれを受け取ると、慈しむように口づけた。
「紅天狗でどうであれ、あたしが悩む事はなかったね。もう大丈夫だよ、ありがとう行長。あたしは、そろそろ戻るよ」
「ええ、その方がいいでしょう。私が、いつあなたに悪さを働くかも分かりませんから」
「また、そんな気もないくせに」
「もう、どうして大海さんは私を信じてくれないんですか。私は健全な成人男子ですよ? そりゃ据え膳よろしく美女が目の前に現れたら、よからぬ事ばかり考えますよ」
「だって、結局あんたは、軽口を叩いたりちょっと触ったりしても、あたしに悪さなんか一度もしてないじゃないか。悪いのは口だけで、あんたは充分真面目で誠実だよ」
行長は不意を突かれたのか、しばしの間軽口も叩けず目を丸くしてしまう。時間を掛けて大海の言葉を飲み込めば、行長は書庫の扉を開いて大海に手招きした。
「屋敷まで送ります。城の中とはいえ、夜道は危険ですから」