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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
部屋へ戻れば、父はすでに戻った後だった。二人の部屋で寝ればいいのにと思い小夜に訊ねたが、父がそれを拒んだらしい。娘二人はともかく、屋敷には他の侍女もいる。いくら父親といえど、女の園で一晩明かすのは躊躇われたようだった。
小夜も疲れているだろうと、大海は床の支度をするとすぐに灯りを消した。だが心は冴えていて、なかなか眠りにつけそうにはなかった。
(行長は、秀吉の真意に気付いていたのかな。そうでなきゃ、役目は果たしたなんて言わないはずだ)
この世の全てが自らの望み通りになる訳ではないと教えるため、子飼いに下げ渡された大海。秀吉は、体は許しても心は許すなと口にしていた。
(だとしたら、あたしが今感じてる想いは、大それたものなんだろうか。あたしが消える事が……皆に出来る、最後の恩返しなのかな)
目を閉じれば、大海には思い浮かぶ一人の姿がある。だが役目を本当に果たし、秀吉が望んだように皆の成長を願うなら、抱く想いは邪魔にしかならない。
(大体、あたしはただの村娘で、武士とは身分が違う。武士は家のために、いい縁談を結ぶべきだ。あたしがそばにいたら、障害でしかないか)