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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
次の日、大海は小夜と共に志麻の元へと向かう。堺へ戻るならば、挨拶もなく出て行く訳にはいかない。大まかな事情は志麻も聞いていたのか、侍女を辞めると聞かされても驚いた様子はなかった。
「そう、秀吉様が許可したのであれば、問題はないでしょう。あなた方は、ここに残るには辛い思いをしました。堺で、ゆっくり養生なさい。それで、出立は?」
「はい、明日には堺へ向かう予定です。志麻さん、今までご迷惑ばかりかけて申し訳ありませんでした。受けたご恩は、堺へ行っても忘れません」
大海は頭を下げ、志麻に感謝を述べる。すると小夜が、そこへ口を挟んだ。
「いえ、志麻さん。堺へ行くのは、わたしだけです。お姉ちゃんは、今まで通り侍女として働かせてください」
思わぬ言葉に、志麻より大海が驚き目を丸くする。頭を上げると、小夜の肩を掴みうろたえながら訊ねた。
「あんた、何を勝手に……あたしは、堺へ行くって決めたんだよ」
「じゃあ訊くけど、それはどうして? どうせ小夜が心配だからとか、そういう理由なんでしょう?」
「妹を心配して、何が悪いのさ! あたしはずっとあんたについてる、そう約束しただろう」