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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
「わたしはそんな約束に、頷いてない! はっきり言うわ、小夜を心配するなら、もう小夜に構わないで!」
小夜の拒絶に、大海は言葉を失ってしまう。だが小夜は拳を握り、手心を加えず続ける。
「お姉ちゃんがいつまでもわたしを甘やかすから、わたしが強くなれないの! お姉ちゃんの優しさは、小夜を駄目にするだけなの!」
小夜は胸の痛みに涙ぐむが、それでも折れようとはしなかった。弱い心は、落ち込む大海を慰めてやりたいと甘い言葉をよぎらせる。だが小夜は、一度首を振ってそれを振り払った。
「わたしは堺に行く、お姉ちゃんはここに残る。それがわたしにとって――お姉ちゃんにとって、一番の幸せだわ。だから、だから……小夜に、お姉ちゃんは必要ない!」
それだけ言い切ると、小夜は部屋を飛び出す。大海は頭が真っ白で、後を追う気力もなかった。
「……はぁ、あの子もあの子で、言葉足らずね」
志麻は頭を抱え溜め息をつくと、大海の顔の前で手を叩く。
「ほら、あなたもしっかりなさい。まさかあの子の言葉を、本当にそのまま受け取ったんじゃないでしょう」