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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
 
「あ……志麻、さん……」

「あの子はあなたが好きだからこそ、重荷になりたくないのですよ。あなたが沈んでしまえば、それこそあの子が悲しみます」

「わ、分かってます。けど……」

「まったく、あなたもあなたで、少し妹離れなさい。そんな間抜けな顔をしていたら、本当に愛想を尽かされますよ」

 志麻は大海の頬を軽くはたくと、背を押し部屋から追い出す。

「今日一日、暇を与えます。あなたはあなたの心が赴くまま、自由になさい。いいですか、あなた自身で、道を決めるのですよ」

 志麻はそう言い残し、襖を閉めてしまう。大海はしばらくその場に立ち尽くすが、縋るものは見つからない。仕方なく、あてもないまま外へと出る事にした。

 日に日に増す寒さは、大海の身を刺す。だが寒風に吹かれた近淡海は澄み、太陽を受けて輝いていた。

(あたし……どうしたらいいんだろう)

 秀吉に言いつけられた役目も果たし、小夜を支える役目もない。大海は今、まったく何のしがらみもない、自由な人間だった。

 だが、それが無性に不安でもある。役目があれば、それに向かい突き進めばいい。だが今の大海に、与えられた道はなかった。
 
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