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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
「そのおかげで全て解決したんですから、謝る必要はありません! 非情になりすぎては人はついてきませんが、時には情を切り捨てる覚悟もなければ負けてしまいます。あたしは、それを二人の囲碁から学びました」
「理屈では理解していても、いざ切られる石となれば憎悪を抱くのが人間というものです。あなたは、強い女性だ」
半兵衛は大海の背中に手を回し、強く抱き締める。豊満な胸の奥で、力強く鼓動を鳴らす心臓。溢れる命を、半兵衛は目を閉じ肌身で感じた。
「大人しく隠居する代わりにあなたをよこせと秀吉に伝えたら、秀吉は慌ててあなたを私に遣わせるでしょうね」
「え……?」
「毎日あなたを喜ばせて、鳴かせて、私だけの檻に閉じ込めて……世界が終わるその日まで二人で抱き合う。そんな未来なら、隠居も悪くないかもしれません」
しかし半兵衛は体を離すと、今にも泣きそうな表情で大海を見つめる。
「けれどそれは、死にゆく私だけの幸福です。私の世界が閉じた後も、あなたの世界は続いていく。あなたには……その長い未来を、共に寄り添う存在が必要です」