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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
「そんな……死にゆくなんて、言わないでください。半兵衛殿は、まだまだ元気じゃないですか」
「元気だとしても、あなたと私は年の差があります。どの道、私の方が早く死にますよ」
たとえそれが事実だとしても、大海は納得がいかず唇を尖らせる。真っ直ぐな気性に、半兵衛は笑みをこぼした。
「大海、今日私があなたを探していたのは、別れの挨拶のためです。実は、高虎殿や子飼い達と共に、戦場へ向かうと決めたのです」
「戦場って……でも、秀吉は」
「秀吉なんて知りません。私は私がしたい事を、好き勝手するだけです」
まるで子どものように駄々をこねると、半兵衛はますます笑みを深める。もうそこに、悲しみに染まる瞳はなかった。
「自分が信じるものを貫く。あなたは身を持って、私に教えてくれました。もらった勇気を腐らせ隠居に逃げては、立つ瀬がないでしょう?」
戦場へ向かえば、半兵衛の体は間違いなく負担がかかる。秀吉が心配する通り、良くない事も起きるだろう。
だが、たとえ良くないと分かっていても、求めて止まないものもある。吉継が半兵衛と再び顔を合わせられたように、諦めずにいたら何か変わるかもしれないのだ。