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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
走り去っていく虎之助を見ても、少年の表情に変化はない。何事もなかったかのように囲炉裏の前へ戻ると、ごろりと寝転がった。
「あ、あたしが言うのもなんだけど……放っておいていいのかい? あの男、兄弟か何かなんだろ?」
「確かに姓は同じ加藤だが、赤の他人だ」
「他人だとしても、あんなにあんたを心配するくらい親しい仲なんだろ?」
大海は余計なお世話と思いながらも、囲炉裏の向かいに座り直し訊ねる。すると少年は、上半身を起こし眉をひそめた。
「怒らないのか?」
「怒るって、なぜ?」
「虎之助が、散々酷い事を言った。私はお前の顔も名前も知らないが、今の時期女が身投げする事情の心当たりはある。私の予想が正しいなら、加害者は虎之助だろう」
「それは――でも、あいつが怒るのも、もっともだろ。親しい人間が変な奴に犯されたら……殺したいくらい憎むし、何も出来ない自分を恨むさ」
まさしく先程の虎之助は、大海が口に出せなかった自分自身である。日も昇らないうちから誘いに来るなんて、気を許した相手にしか出来ない事だ。大海は少年へ何かした訳ではないが、疑われるのも無理はなかった。