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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
「そりゃ言葉に傷付かない訳じゃないけど、実際反論も出来ないんだからしょうがないさ。あたしは汚くて……大事な人すら守れない、無力な人間だ」
虎之助のように声を上げられたなら、小夜は泣かずに済んだのだ。耳に残るいやらしい音を思い出せば、また涙が溢れ出した。
「……ごめん、もう出ていくから……迷惑掛けて済まなかった。早く、あいつと仲直りするんだよ」
今度こそ着物を羽織って、大海は立ち上がる。だが少年も立ち上がり大海の手首を掴み、足を止めた。
「私が仲直りするなら、お前も仲直りしないと駄目だ。私はいかな理由があれ、虎之助の暴言は看過出来ない。虎之助が謝らない限りは、私も遺恨を残してしまう」
「いや、でもあたしが一緒に行ったら、またあいつが怒るだろ」
「それで話を聞かず罵るようなら、仲直りする価値などない」
少年は小柄だが強引に大海を引っ張り出し、迷いなく歩き出す。
「ああそうだ、私は孫六、加藤孫六だ。お前の名は?」
「あたし、は……月橋大海だ」
孫六は頷くと、それからは無言で進む。虎之助はどこへ向かったのかなどと悩む様子は、全くなかった。