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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
向かった先は武士達の鍛錬場なのか、藁を包んだ棒がいくつも立てられている。虎之助は隅にある切り株に座りうなだれていたが、二人がやってくると険しく睨みをきかせた。
「……何の用だ」
「私はほとほと失望したが、この女が仲直りしろと言うから来た」
「なんだよそれ……俺と孫の事なんか知らねえくせに、偉そうに」
「一つ、虎之助は大きな誤解をしているようだから言っておく。私はこの女が堀に身投げした現場を目撃し助けただけだ。その際着物が濡れたから、乾かすために一度脱いでもらった。ただ彼女は大柄ゆえ、私の持つ着物では丈が足りず、結果あのようなしどけない様相になっただけだ」
身投げと聞いて、今まで崩れなかった厳しい目が揺れる。だが孫六は淡々と、事実だけを語った。
「今日に至るまでの事情、濡れた髪の毛や乾かしている最中の着物を見れば、何か異常が起きたのだと察するべきだ。それを無視して妖婦だなど貶める浅はかさが、彼女を身投げに走らせたのではないか?」
「そ、それは……」
「彼女が妖婦に見えるのだとすれば、それは虎之助が妖婦だと思っているからだ。むしろ、私から見れば彼女は――」