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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
 
 大海に兄はいないが、もしいたとすればこうして慰めてくれたのかもしれない。与えられた甘える場所は、疲れ切った大海には何よりも必要なものだった。

「妹だけじゃない。お前の事も、しっかり責任を取ってやる。行長や吉継みたいな奴らがお前を慰み者にしようと近付いたら、すぐ俺に言え。力ずくでも止めてやる」

「……市松って奴が近付いたら?」

 大海の中で一番痛みとして記憶されているのは、市松と呼ばれていた男の粗暴さだった。虎之助は一瞬言葉に詰まるが、咳払いして答える。

「あいつを煙に巻く方法なんか、何百通りも知ってる。それに、酒さえ飲まなきゃ、あいつは気のいい奴だぞ」

「じゃあ、市松の時もあんたに言って良いのかい?」

「もちろんだ。むしろあいつが相手なら、俺じゃないと無理だ。あいつは腕っ節こそいいが、口は悪くて態度も悪いし、酒癖も悪いからな」

 その言い方は、吉継が佐吉を評価した時とほとんど同じである。散々けなしながらも友を思う武士達の不器用さに、大海は涙より笑いがこぼれた。

「ふっ……はは、あはははっ、なんだい、尾張だの近江だと言っても、皆似たようなもんじゃないか」
 
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