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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
「馬鹿っ、やめろ!!」
自身の目を突き刺し潰そうとした大海だが、虎之助が慌てて両手を押さえて阻止する。だが大海はなおも力を込め、自身へ尖った先を向けようとした。
「離せっ! あんたに止められる筋なんてない!!」
「――だから、そんな事すれば妹が泣くって言っただろうが!」
怒鳴りつけてようやく、大海は抵抗をやめる。虎之助はすぐに大海から枝を奪い投げ捨て、これ以上馬鹿をしないよう手首をしっかりと押さえた。
「ったく、かっとなると目の前しか見えなくなるのは、市松だけで充分だってのに……」
「……悪かった」
大海は素直に謝るが、それは妹の存在を思い出したからだろう。結局小夜にしか向いていない心に虎之助は複雑な心境を抱くが、また自傷されてはかなわない。責める気持ちにはなれなかった。
「その気性の荒さ、男だったらいい武士になっただろうに。勿体ないな」
「武士なんて……男なんて、皆嫌いだ」
さらに遠くなってしまった距離に、虎之助は溜め息を漏らす。今になって自分の過ちを後悔するが、汚してしまったものをなかった事には出来ない。出来るのは、なるべく跡を残さないよう洗う事である。