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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
それはまさしく自身へ言われているようで、虎之助は目を逸らす。だが大海はそれに気付かず、さらに続けた。
「まあ、美丈夫だろうがそうでなかろうが、そういう奴は信用ならないね。逆に顔なんかどうだって、話をきちんと聞いてくれる奴の笑みの方が、あたしには何倍も価値がある。自分の好きな人間が喜んでいれば、あたしだって嬉しくなるからね」
「好きな人間……なんて、村にいたのか?」
「そりゃ、沢山いるよ。親はもちろん、お隣の権兵衛さん夫婦とか、いつも野菜をお裾分けしてくれるシズノさんとか――今側にいるのは小夜だけだけど、いつかは……」
およそ男の香りのない大海に、虎之助はどこか安心した気持ちを抱く。同時に、大海という人間が歩んできた人生を知ったような気分を抱いた。小さな村から拾ってきたと秀吉は語っていたが、その魂は汚れがない。
だがそれは、姫のように箱へ入れて庇護されたための純白ではない。尖った石が海へ辿り着く頃には丸くなっているように、時には険しく、時には冷たい、長い長い川の流れで洗練された美しさだった。