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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
大海の着物は、生乾きの上、雑に投げたため汚れてしまっている。虎之助は自分の着物を一枚渡して羽織らせた。
「で、でもあたし……小夜も、心配だし」
「志麻には俺が声を掛けて、話を付けておく。志麻なら女だから、妹に近付いても安心だろ。お前の仕事の都合も、間違いなくつけてくれる」
贔屓を受けている自覚はあるようで、虎之助は自信気である。大海はすっかり力が抜けていて、少し押せばすぐに頷きそうだ。虎之助がさらに口を出そうとしたその時、足音がこちらへ向かってきた。
「よう、虎之助。今日の早朝訓練はどうだ?」
やってきたのは、宴の日に出会ったもう一人の男、市松。秀吉の従兄弟とは言うが、大柄な体も荒っぽそうな顔付きも、秀吉には似ていない。市松は二人の様子に気付くと、目をぱちくりとさせて詰め寄ってきた。
「って、おい、孫六は!? もしかして孫六帰して、朝っぱらからまぐわってたのか!? 俺にも声を掛けずに!?」
虎之助を堕落させたと怒るのかと、大海は身を固くする。だが市松が次に口にしたのは、意外な一言だった。