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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
頭の中がピンクのジュースのような甘い妄想で満たされて行く中、梨子はその日の晩ただひたすらうたた寝とオナニーを繰り返した。いつからか指先は乳首だけを追い、その刺激に男を誘うような腰使いが混じる。

ベッドが微かに軋む音に怯えながら、梨子は秘部を疼かせまた自分を責めていった。


*****


朝。通勤・通学の電車やバスは、様々な要素が固定化されたものだった。

時間はもちろん、使う駅乗る車両乗る乗客。慣れてくればふと「あの人髪切った」と思うこともあるし、座席に居るどの客がどの駅で降りて、代わりに空いた席で朝のだるい時間を過ごせるかも分かるようになってくる。

しかし梨子ははなからそんな競争をする気も無く、自身が降りる駅のホーム側のドア横、車両の一番隅で毎日息を潜めていた。

「……」

すぐには痴漢は現れない。様子見をしているのか、それとも違う駅から乗るのかいつも三つ駅を過ぎた辺りからそれは始まる。

『…どうしよう…、もう…今日こそちゃんと、痴漢だって、みんなの前で…。それが無理でも、止めて下さいって大きな声で言えば…。でないと私、どんどん変になっちゃう…』

梨子はぎゅっと唇を結び、ここ最近いつもしている決意を新たにし直し痴漢を待った。

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