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第1章 アペリチーフをご馳走に。

教師や、よほど勉強熱心な生徒しか立ち入ることは無いだろうという準備室は、それぞれの教師が使う机以外煩雑としていた。

「椅子借りてくるといいよ、そっちの先生は五分前派だから」

「？ 何するんですか？」

梨子に座るように指示し、慣れたようにアルコールランプやビーカーを取り出す新谷。黙って見つめていれば、さも当然のように実験器具で湯を沸かしまさかのコーヒーを入れ始めた。

「砂糖とミルクいる？」

「まずそのコーヒーがいりません…!!普通に実験に使うのですよね!?」

「え、洗ってあるから大丈夫だよ。準備室内の先生の中では割りとメジャーなんだけどなあ。みんな大学で先輩達に教わって飲むんだよ」

「その伝統、絶対止めた方がいいと思います…」

「はい、ビーカー熱いからハンカチ出して」

「……」

小さな容量のビーカーを差し出され、梨子はおそるおそるそれを受け取る。砂糖とミルクを貰いかき混ぜれば中身は確かに普通のコーヒーだった。

「…先生は、もうずっとあの電車？お家遠いんですか？」