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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
あの時見せた、生徒を怒る時とも違う厳しい瞳と、梨子を慰めてくれた時の優しい目。あの流行遅れの眼鏡は殊更にその両方を際立たせてくれた。

『…ほんと、先生彼女居るのかなあ。だとしたら彼女さんはいいなあ…』

そんな年相応の淡い恋心で何とか気持ちの天秤を落ち着かせ、それでも梨子は隠れるように更衣室に向かう。

中には後輩が何人か居て、挨拶やお喋りを交わしながらそれぞれのロッカーに別れ上履きや通学鞄を入れていた。特別親しいという訳でもなかったがさも日常といった感じで、梨子は少しだけ現実に戻れたような気がして安堵した。

そして自分自身もいつものように器用に制服の中で水着に着替えていったのだが、

『──え?』

途中その違和感に気付いた梨子は、慌ててバッグの中を漁り他のものをひっくり返しながら何度も何度もその中を見直した。

『……うそ』

しかしその違和感と見付からない解決策に、梨子は半ば呆然としたままセーラー服の中でゆっくり──ゆっくりと胸元に触れる。

水着越しにダイレクトに触れる胸の先端。その膨らみに頬が一気に染まり、焦りに頭の中は真っ白になった。

『なんで…そんなはず…』

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