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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
水泳部の部室は校舎から離れた場所にあった。というのも去年新設された室内プールが校庭を挟んだ向こうにあったからだ。

付け足されたように校庭の隅を横切る渡り廊下を歩いて部室兼更衣室に向かうと、その少し先にあるシャワールームの辺りできゃあきゃあと聞きなれた女の子達の声が聞こえてきた。

「──ねえねえ新谷せんせー、彼女居るの?それともどーてー?」

「あっはは、やだあー!」

「ええ?まったく、最近の女子高生は…。バカ言ってないで、さっさとシャワー浴びてプールサイドに集合!お前達にはそんな話百年早いよ」

「百年経ったらおばーちゃんじゃん!」

「それは屁理屈ー」

わざと女の子達に合わせるように間延びした声で応える男性教諭の声。

梨子はそれに少しだけほっとしたような気持ちで更衣室に入った。

『先生、今日もモテモテだなあ…』

先に来ていた友人らとお喋りをしながら水着に着替えつつ、先程の光景を頭に思い浮かべる。

先輩女子生徒達に囲まれていたのは、大学を卒業し教師歴二年余りの新谷仁…梨子の所属する水泳部の顧問であり、学科は化学を担当する若い男性教諭だった。

新谷は顔立ちが整っていること、性格が穏やかなことなどから学年問わず女子生徒に人気で、密かに想いを寄せられるか或いは今のようにいい遊び相手にされていた。
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