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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
梨子自身はどちらかといえば前者で──生徒間で囁かれる良い噂に加えて、意外と面倒見がいいとか親しい生徒は下の名前で呼ぶとか、眼鏡はちょっと流行遅れだなあといった評価を密やかに持っていた。

あとは理数系が苦手でよく補習でお世話になっていたので、部活を含めると普通の女子生徒よりは接する機会が多いような気もする。なので部活後、先輩達が居なくなった片付けの時などは話をすることもあった。

今日の片付け当番は一年生で、二年生である梨子達はその監督に残る。そして終わり次第顧問にそれを伝え鍵をかけて貰い、校舎を出るところまでみんなで帰るのが常だった。

「──先生、片付け全部終わりました。みんなそろそろ上がると思います」

「んー了解。──ああ、梨子」

「あ、はい」

「お前は家が遠いんだから、あんまり無理しないようにな。あと春先は、痴漢とか変な奴がわいて来るから帰りは気を付けるんだぞ」

「…ありがとうございます?」

「なんで疑問系なんだ」

「あはは」

その日はたまたま手の空いた梨子が新谷の元を訪れそんな些細な話を交わしたのだが、しかし──

『…先生…そのセリフ、もう…遅いんです…』

梨子はきゅんと疼いた水着の下の感覚に、慌てて話を切り上げ逃げるようにその場を去った。

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