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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
へたりこむ梨子を見て慌てたように駆け寄ってくる女子部の三年生。

「ちょっ、顔真っ赤だよ!風邪って聞いたけど熱あるんじゃない?先生!」

「うん、ちょっとダメそうだからこっちはこれで進めておいて。大会メンバーと補欠メンバーは一応メニュー組んであるから。他はいつものメニューと部活いっぱい自由時間。何かあったら男子部の顧問に知らせて。梨子は少し顧問部屋で休ませて、様子見て僕が駅まで送ってくから」

「はい!──梨子ちゃん、大丈夫?立てる?」

「…は、はい。…大丈夫…です」

さも当然のように頭の上で流れていく日常会話に、梨子はかろうじてすがり情けない笑顔を作る。

それが余計に痛々しく見えたようで、

「ほら梨子、掴まって。──抱っこ」

「あ、先生!梨子ちゃんのタオル!」

いつもなら黄色い歓声が上がりそうな状況にも関わらず、面倒見の良い先輩のおかげで梨子は憐れみの言葉と視線に見送られ、救いの無いまま牙を隠した獣に連れ去られることになった。


*****


更衣室に併設された四畳程の小さな部屋は、資料や記録表、歴代のトロフィーなどが置かれ顧問が事務仕事をする部屋として宛がわれていた。

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