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アペリチーフをご馳走に。
第1章 アペリチーフをご馳走に。
優しく両手で頬を包まれ、指先で髪をとかれ……いつもの穏やかな口調で語られる半強制の甘い告白。

それで梨子は、何故痴漢が──新谷が胸しか責めてくれなかったのか悟って、切なく身を縮めた。

外堀を埋めるように、新谷はゆっくりゆっくりと梨子が快楽に堕ちるのを待っていた。しかし全ては与えずに、痴漢と教師二つの顔で梨子の中を満たし、それ以上が欲しければ自分のものになれと言う。未知の快楽という、梨子を縛るためのサディスティックな鎖。

一方で自分のことを好きだという。梨子よりもずっと成熟した大人で、全てを与えずにその分まだ引き返せる余地を残し逃げ道を示してくれている。自身の性癖で梨子を傷付けないよう、欲望と愛情のギリギリのラインを見極めてくれている。口移しで貰う砂糖菓子のような、梨子だけが味わえる淡い恋慕。

そんなの、どっちも欲しいに決まっている。だからこそあの流行遅れの眼鏡の奥は、NOと言わせない確信の光を宿している。

どうせ断ったところで、脅迫なり何なり次の数手が用意されているのだろう。それなら、ダイヤの鎖と甘い菓子を貰った方がずっといい。

「先生…ずるい…」

「うん、僕は一応大人で、身の程をわきまえたサディストな先生だからね。ずるいよ」

「……」

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