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紅蓮の月~ゆめや~
第1章 プロローグ
 その不思議な言葉は何を意味しているというのか。古着屋だと言いながら、古着を売るのではなく、夢を売るという店とは何なのだろう。
 実幸にとって、すべてが謎だらけであった。
「先ほど、夢を売るとおっしゃいましたが、夢を売るって、どういうことですか」
 実幸は心に浮かんだ疑問を率直にぶつけた。と、美しいひとは、ふわりと微笑んだ。
 その顔は、むしろ実幸の問いを待っていたかのようでもある。まるで大輪の花がほろこんだような艶(あで)やかな微笑だ。同性の実幸でさえ思わず見惚れてしまうような魅力的な表情だった。
「ここにある着物はどれも皆、着る方を自ら選ぶのです」
 そう言いながら、女主人は実幸の背後に回ると、さっと素早い動作で小袖を肩から羽織らせた。
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