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紅蓮の月~ゆめや~
第9章 第三話 【流星】 プロローグ
 若い人が隣の大きな町へ働きに出ていったまま帰ってこず、次第にこの町の住人が高齢化してきているとは聞いたことがある。だが、これほどまで町がさびれているとは想像だにしなかった。
 美都は込み上げてくる哀しみに耐えかねて、小さな吐息を洩らした。その時、豆腐屋から少し離れたはす向かいの店に眼が止まった。静まり返った商店街の中でたった一軒、その店だけがまだ細々と営業を続けているようだ。美都は記憶の糸を懸命に手繰り寄せようとした。
 確か、あの店は古着屋を生業(なりわい)としていたのではなかったろうか。子どもにあまり縁のある店ではなく、美都も興味本位で一度だけ覗いてみたにすぎない。もう二十年も前の、しかも子どもの記憶だから当てにはならないけれど、朧げにあの店のことも憶えている。
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