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紅蓮の月~ゆめや~
第1章 プロローグ
女主人の言葉が終わらない中に、ボーンボーンと時計が鳴り始めた。彼女の丁度真後ろに大きな柱時計があるのだ。この店のものは何もかもが相当の時間を経過している品ばかりのようだ。この時計ですら骨董品としての価値がありそうに見える。
時計が時を告げる音につられるようにして、実幸は黒い数字が並ぶ文字盤を見た。時計の針はきっかり午後五時を指している。
実幸はそろそろ帰ろうと思った。この華やかな小袖に未練はあるけれど、これ以上、この女性と押し問答をしていてもキリがない。これが本物にしろ偽物にしろ、実幸に買うことはできないのだから。
そう思った時、突如として自分を取り巻く周囲の空間が揺れた。グラリと身体が傾(かし)ぎ、次いで眩暈(めまい)のような感覚が襲う。愕いて近くにあるものに掴まろうとしても、手は空しく宙を掴むばかりだ。
時計が時を告げる音につられるようにして、実幸は黒い数字が並ぶ文字盤を見た。時計の針はきっかり午後五時を指している。
実幸はそろそろ帰ろうと思った。この華やかな小袖に未練はあるけれど、これ以上、この女性と押し問答をしていてもキリがない。これが本物にしろ偽物にしろ、実幸に買うことはできないのだから。
そう思った時、突如として自分を取り巻く周囲の空間が揺れた。グラリと身体が傾(かし)ぎ、次いで眩暈(めまい)のような感覚が襲う。愕いて近くにあるものに掴まろうとしても、手は空しく宙を掴むばかりだ。