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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
―流星―
     一

 次第に暮れなずんでゆく西の空を見上げ、美耶子(みやこ)は我知らず溜め息をついていた。ふと気が付けば、もういかほどこうして虚ろに空ばかりを眺めて過ごしていたのだろうかと思う。確かここに座った時、空はまだ明るかった。
―今夜、殿はおいでになるであろうか。
 結局、美耶子はその想いから逃れたくて、こうして毎日空ばかりを見て徒(いたづら)に日を過ごしているのだ。
 美耶子の良人藤原兼家は位こそさして高くない廷臣だが、その身分は藤原北家の嫡流、関白右大臣藤原帥輔の三男である。当母姉の安子(あんし)はやんごとなくも村上帝の女御として禁裏にあり、帝の寵愛も厚くときめいている。
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