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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
 美耶子の父倫寧も一受領でしかない。兼家ほどの名家の御曹司が求婚してくるのは滅多とない幸運であった。
 むろん、美耶子も最初は兼家の求愛を受け容れるつもりは毛頭なかった。あまりにも身分や立場が違いすぎる相手との結婚はかえって不幸をもたらすだけだ。最初は良いけれど、男に飽きて棄てられでもすれば、それこそ分不相応の縁を望むからよと世間の物笑いの種になってしまう。
 美耶子の両親もそう言ったし、美耶子自身もそう思っていたゆえ、兼家には丁重な断りの文をしたためた。ところが、兼家は諦めなかった。幾度でも臆面なく熱い言葉を連らねた恋文を送りつけてくる。美耶子もその度にやんわりと、だが、きっぱりと辞退の返事を書いていたのだが。
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