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第10章 第三話　【流星】　一

　焦れた兼家はついにある夜、美耶子の傍近く仕える女房を手なずけ、その手引きで美耶子の部屋に侵入してきた。どうやら、兼家は自分の従者にまず女房を口説き落とさせ深い仲になるように仕向けたらしい。そして、女房と従者が深間になった辺りで男が女に手引きをするようにと言い含め、兼家を美耶子の寝室に案内したのだ。
　随分と強引なやり方だった。突然、寝所に忍び込んできた闖入者に愕き怯え、美耶子はかなり抵抗したけれど、いかにせん非力な女の身では屈強な若い男にかなうはずもなかった。
　殆ど手込めも同然に兼家のものにされてしまったわけだが、予想に反して、兼家はまめ
な男であった。しきたりに倣い、新枕を交わして三日間は女の家に通って来たかと思えば、三日目の朝に所顕(ところあらわし)（当時の披露宴のようなもの）を盛大に行った。