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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
兼家の信頼する従者から知らされた話ゆえ、信憑性は十分にある。その康光(やすみつ)という従者はたいてい兼家の夜歩きには馬を引いて伴をしている。むろん、女の許へゆく夜もしかりである。なのに、その新しい女の許へ忍んで行く日に限って、康光を外して他の者に伴をさせるというのだ。恐らくは美耶子の屋敷の女房を妻にしている関係上、康光から情報が洩れることを警戒しての配慮に違いない。
なかなか用意周到というか、よくよく頭が回るというか、腹立たしいというよりは呆れてしまう。
だが、その中に兼家の新しい女の存在は世間でもしきりに取り沙汰されるほどになった。兼家が人目もはばからず、その女に繁く通うようになったからだ。その女は貴族の娘
ではなく、町家の女だという。ゆえに兼家も外聞をはばかり、その女の家にゆく際には身分を隠して網代車(身分の高くない者が乗る粗末な車)でひそかに出かけていく。
なかなか用意周到というか、よくよく頭が回るというか、腹立たしいというよりは呆れてしまう。
だが、その中に兼家の新しい女の存在は世間でもしきりに取り沙汰されるほどになった。兼家が人目もはばからず、その女に繁く通うようになったからだ。その女は貴族の娘
ではなく、町家の女だという。ゆえに兼家も外聞をはばかり、その女の家にゆく際には身分を隠して網代車(身分の高くない者が乗る粗末な車)でひそかに出かけていく。