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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
だが、あまりに熱心に毎日のように通うので、いつしか新しい愛人―町家の女であることから「町小路(まちのこうじ)の女」と呼ばれた―の存在は多くの人の知るところとなってしまったというわけだ。
この「町小路の女」の登場は、美耶子を穏やかならぬ気持ちにさせた。実際、兼家は町小路の女に通い始めてからというもの、美耶子から足が遠のき始めた。三日に一度は必ず訪れていたのが数日に一度になり、その中に十日や半月は何の音沙汰もないのが当たり前になった。来ない夜のための言い訳めいた文も寄越さなくなった。
美耶子は更に溜め息をついた。この前に兼家が訪れたのは確か―指を折ろうとして、また知らず吐息が洩れる。両手を合わせてももう足りない、否、先の訪れがいつだったか思い出せないほどに日が経っているのだ。恐らく、そろそろ二十日近くになるのではないか。
もちろん、その間、便りの一つもない。
この「町小路の女」の登場は、美耶子を穏やかならぬ気持ちにさせた。実際、兼家は町小路の女に通い始めてからというもの、美耶子から足が遠のき始めた。三日に一度は必ず訪れていたのが数日に一度になり、その中に十日や半月は何の音沙汰もないのが当たり前になった。来ない夜のための言い訳めいた文も寄越さなくなった。
美耶子は更に溜め息をついた。この前に兼家が訪れたのは確か―指を折ろうとして、また知らず吐息が洩れる。両手を合わせてももう足りない、否、先の訪れがいつだったか思い出せないほどに日が経っているのだ。恐らく、そろそろ二十日近くになるのではないか。
もちろん、その間、便りの一つもない。