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第10章 第三話　【流星】　一

　美耶子が思い乱れているその時、ふと西の空に光るものを見つけた。あっと思っている間に、その光る物体は尾を長く引いて、山の端に消えた。気が付けば、空は更に暗さを増している。陽は完全に落ち、気紛れな夜が帳を降ろし、地上のすべてのものをぬばたまの闇で包み込もうとしていた。
「流れ星―」
　美耶子は小さな声で呟いた。
流れ星は不吉な前兆とされている。だが、キラキラと輝きながら夜空を駆け抜けてゆく星は美しく、美耶子には到底凶兆であるとは思えない。むしろ、何か良いことが起こりそうな気さえした。
―どうか、今宵こそは殿がお見えになりますように。