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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
 美耶子は先刻見たばかりの流れ星に向かって祈った。星に願い事をするとはまた、何とも子どもじみたことだと思うが、兼家に対しては素直になれくても、あの美しい流れ星になら本当の気持ちを打ち明けることができる。それに、流れ星なぞ滅多に見ることはできないものだ。そのように稀な現象に出逢えたのならば、そのときに祈れば、願いが叶うように思えてならなかった。
 漆黒の夜空に縫い止められたように、たくさんの星々がきらめいている。山の端近くに細い新月が頼りなげに浮かんでいた。
 まるで切り紙細工を貼り付けたような月は、美耶子の心のように不安定に見える。美耶子が心細い想いで月を見上げていると、背後から女房が控えめに言上した。
「お方様、殿のお見えにございます」
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