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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
女房の声も心なしか浮き立っている。押さえようとしている口調に心の華やぎが滲み出ていた。この女房は兼家の従者康光の妻である。今宵は美耶子の許へ来るので、兼家も康光を連れてきたのだろう。兼家が美耶子と夜を過ごす間、康光もまた妻とのひとときを持つことが許される。女房の表情が嬉しげに見えるのも至極当然のことであった。
美耶子は、この女房が心底羨ましかった。我が身もまた、この女のように良人の来訪を素直に歓び、その気持ちを隠すことなく伝えることができたなら、どんなに良いだろう。でも、美耶子にはできないのだ。どんなに素直になりたくても、勝ち気な性分が邪魔をしてしまう。
美耶子は、この女房が心底羨ましかった。我が身もまた、この女のように良人の来訪を素直に歓び、その気持ちを隠すことなく伝えることができたなら、どんなに良いだろう。でも、美耶子にはできないのだ。どんなに素直になりたくても、勝ち気な性分が邪魔をしてしまう。