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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
 兼家の訪れを待ち侘び、毎日、今夜こそ来るかと夜が近づくにつれて鏡を覗き込み、化粧を直したりする。今夜もお気に入りの紅梅襲の袿を着ていた。この袿は、かつて兼家がとてもよく似合うと誉めてくれたものだ。もっとも、兼家本人はそんなことを言ったのも、もう忘れてしまっているだろう。女の化粧や衣装について誉める時、言葉を惜しむ男ではないけれど、果たして、どこまで真剣に言っているのかは疑問だ。
 こんな空しい、ささやかな努力をしている自分が時々無性に哀れになる。ならば、そんな徒労に終わる努力なぞせねば良いのに、毎夜、何度も鏡を覗き込み紅を引く。そんな我が身の浅はかさにまた嫌悪感を感じ、ますます憂鬱になるのだ。
 そんなことを考えていると、ほどなく兼家が別の女房の案内で現れた。
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