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紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 一
美耶子は兼家を真っすぐに見据えた。
「お風邪でも召されましたか」
「い、いや、何ほどのことはない。ちと夏風邪でも引いたのかもしれぬ」
兼家は口ごもりながら言うと、気まずげに美耶子から視線を逸らした。
―夜遊びが過ぎるのではございませぬか。
いっそのことはっきりと言ってやりたかったけれど、流石にそれは躊躇われた。美耶子が沈黙を守っていると、兼家は慌てたように続けた。何か言わなければ間が持たぬとでも言うようだ。
「それにしても、やはり、美耶子はいつ見ても美しい。こうして見ると、庭に咲く菖蒲のようではないか」
兼家が露骨な愛想を言うのがまた余計に癇に障る。大方、方々の女たちに日毎夜毎、同じような台詞を囁いているに相違ない。
「お風邪でも召されましたか」
「い、いや、何ほどのことはない。ちと夏風邪でも引いたのかもしれぬ」
兼家は口ごもりながら言うと、気まずげに美耶子から視線を逸らした。
―夜遊びが過ぎるのではございませぬか。
いっそのことはっきりと言ってやりたかったけれど、流石にそれは躊躇われた。美耶子が沈黙を守っていると、兼家は慌てたように続けた。何か言わなければ間が持たぬとでも言うようだ。
「それにしても、やはり、美耶子はいつ見ても美しい。こうして見ると、庭に咲く菖蒲のようではないか」
兼家が露骨な愛想を言うのがまた余計に癇に障る。大方、方々の女たちに日毎夜毎、同じような台詞を囁いているに相違ない。