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紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 二
兼家という男を愛してしまったからだ。
兼家を取り巻くあまたの女たちの中の一人でありながら、兼家を独占したいと強く願わずにはおれない。そのためにならば、憎しみの焔を燃やし続ける夜叉にもなれる。我が身の中にある醜い感情は、美耶子が女として生まれたがゆえに持つ業(ごう)であった。
兼家に言ったように尼にでもならない限り、美耶子はこの怖ろしい業から逃れられない。否、たとえ世捨て人となったとて、生きていれば、およそ愛欲という世のしがらみから解き放たれることは難しい。この世に存在する限り、美耶子は兼家を愛し続けるだろうから。落飾して上辺だけは世捨て人となったからといって、美耶子の中から兼家の面影が消えなければ、美耶子は永遠に煩悩に囚われたままだ。
兼家を取り巻くあまたの女たちの中の一人でありながら、兼家を独占したいと強く願わずにはおれない。そのためにならば、憎しみの焔を燃やし続ける夜叉にもなれる。我が身の中にある醜い感情は、美耶子が女として生まれたがゆえに持つ業(ごう)であった。
兼家に言ったように尼にでもならない限り、美耶子はこの怖ろしい業から逃れられない。否、たとえ世捨て人となったとて、生きていれば、およそ愛欲という世のしがらみから解き放たれることは難しい。この世に存在する限り、美耶子は兼家を愛し続けるだろうから。落飾して上辺だけは世捨て人となったからといって、美耶子の中から兼家の面影が消えなければ、美耶子は永遠に煩悩に囚われたままだ。