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紅蓮の月~ゆめや~
第14章 最終話 【薄花桜】 一
小文は何代も前から続く老舗の呉服問屋の娘であった。治助は店で働く下男であり、二人は身分違いの恋に落ちたが、気難しい父親に結婚を認めて貰えなかった。小文には親の決めた許婚者がいたのである。父親は三人いる娘の中、次女の小文に婿を取って暖簾を継がせるつもりでいた。小文は聡明な上に気だても良く、都でも評判の美貌であった。
だが、小文は治助以外の男と結婚するつもりなどなく、父親に何としてでも治助と添わせて欲しいと頭を下げて頼み続けた。親不孝な自分を勘当してくれても構わない、治助と添わせてくれるのならば、嫁入り道具も何も
要らない―と懸命に懇願する娘の姿に、ついに頑固な父親も折れた。
その代わり、小文の言うように今後店と小文は何の縁もゆかりもないものとし、今後一切親子とも思わぬと父親は言い渡した。むろん、小文は身一つで家を出たのである。
だが、小文は治助以外の男と結婚するつもりなどなく、父親に何としてでも治助と添わせて欲しいと頭を下げて頼み続けた。親不孝な自分を勘当してくれても構わない、治助と添わせてくれるのならば、嫁入り道具も何も
要らない―と懸命に懇願する娘の姿に、ついに頑固な父親も折れた。
その代わり、小文の言うように今後店と小文は何の縁もゆかりもないものとし、今後一切親子とも思わぬと父親は言い渡した。むろん、小文は身一つで家を出たのである。