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紅蓮の月~ゆめや~
第1章 プロローグ
 気が付いたら、強士がいつも乗るバス停まで歩いていて、偶然走ってきたバスに乗り込んでいた。そのバスは強士がいつも乗るバスとは違う方向に行くことは判っていたけれど、行く先なんて頓着しなかった。
 そしてバスに揺られること二十分、投げやりな気持ちで降りたバス停は実幸が来たこともない見知らぬ町だった。さして大きくもない町を、実幸はゆっくりと歩いた。どれくらい歩いただろうか、ふと立ち止まって見上げた空が憎らしいほど蒼いのに、つい溜め息を洩らしてしまったというわけだ。
 実幸はゆっくりと周囲を見回した。町外れらしいこの界隈は昔は商店街だったのだろう、小さな店舗だったらしい建物が軒をつらねている。だが、現在は閉めている店が殆どで、まるで無人の廃墟が立ち並ぶ町のようにさえ思えた。
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