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紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
―プロローグ―
コツンと足許の小石を蹴ると、花凛(かりん)は小さな吐息を洩らした。今日は朝からずっと雨が降っている。晩秋の雨はまるで花凛の心の中まで凍らせてしまうほどに冷たかった。
―家に帰りたくない。
花凛は本気で思った。また、あの取り澄ました―上辺だけは穏やかに、殊に父の前だけではにこやかに、いかにも優しげな母親然としながら、裏では事ある毎に花凛に辛く当たる継母の顔を見なければならないかと思うと、ゾッとする。
四十もそろそろ半ばになろうかという父が再婚したのは一年ほど前のことになる。花凛の父は商社マンで化粧品メーカーの営業課長を務めている。ある日突然、直属の秘書だという女性を連れて家に帰ってきた。
コツンと足許の小石を蹴ると、花凛(かりん)は小さな吐息を洩らした。今日は朝からずっと雨が降っている。晩秋の雨はまるで花凛の心の中まで凍らせてしまうほどに冷たかった。
―家に帰りたくない。
花凛は本気で思った。また、あの取り澄ました―上辺だけは穏やかに、殊に父の前だけではにこやかに、いかにも優しげな母親然としながら、裏では事ある毎に花凛に辛く当たる継母の顔を見なければならないかと思うと、ゾッとする。
四十もそろそろ半ばになろうかという父が再婚したのは一年ほど前のことになる。花凛の父は商社マンで化粧品メーカーの営業課長を務めている。ある日突然、直属の秘書だという女性を連れて家に帰ってきた。