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紅蓮の月~ゆめや~
第5章 第二話【紅蓮の花】 プロローグ
 その日から悪夢が始まった。三十そこそこのその女性は今風の美貌の、どこか冷たい印象を与えるひとだった。
―この女性と再婚しようと思うんだが、花凛はどう思う?。
 少し困ったような、照れたような面持ちの父に、花凛はとても嫌だとは言えなかった。 父はもう、この女との結婚を決めているのだ。今更、花凛が異議を唱える問題ではない。それに、相手の女性の印象はともかく、花凛は父には幸せになって欲しいと心から願っている。小学校入学直前に母親を病で喪った花凛を、父はこれまでずっと男手一つで育ててくれたのだ。花凛ももう高校二年になった。いつまでも子どもではない。これからは父には自分の幸せを考えて貰いたいと思う。
 初めて紹介されてから半年後、父はその女性と再婚した。義理とはいえ、母娘の間柄となったのである。最初、花凛は努力した。
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