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紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 一
義経は肉親の愛情に飢えている。乳飲み子の頃に父を亡くし、幼くして母とも引き離され、両親の縁薄く育った不遇な少年時代。持ち前の人好きのする気さくな人柄から多くの人を惹きつけ、彼の回りには人が集まった。この平泉まで共をしてきた家臣武蔵坊弁慶をはじめ彼の魅力の虜となった人は少なくない。むろん、凛子もその一人だ。
が、誰にも彼の心の空白を埋めることはできなかった。どれだけ多くの家臣に囲まれ慕われても、義経が心の底から欲していたのは肉親と呼べるひとの愛情だった。頼朝は義経の憧れの象徴だったのだ。義経は顔すら知らぬ義兄に亡父の面影を重ね、慕った。兄のためにと働き、戦い続けた。しかし、生きることにあまりにも不器用で純朴な彼は後白河法皇の奸計によって頼朝と仲を分かたれ、孤立するに至った。
が、誰にも彼の心の空白を埋めることはできなかった。どれだけ多くの家臣に囲まれ慕われても、義経が心の底から欲していたのは肉親と呼べるひとの愛情だった。頼朝は義経の憧れの象徴だったのだ。義経は顔すら知らぬ義兄に亡父の面影を重ね、慕った。兄のためにと働き、戦い続けた。しかし、生きることにあまりにも不器用で純朴な彼は後白河法皇の奸計によって頼朝と仲を分かたれ、孤立するに至った。