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紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 一
 こうやって身体を重ね合い、寄り添い合うひとときは紛れもない凛子だけのものだから、凛子は一抹の淋しさを感じながらも、かけがえのないこの一刻を得難いものだと思う。
 凛子はとりとめもない物想いに耽りながら、軒を打つ雨音に耳を傾けた。そういう意味で、凛子の義経への想いは永遠に叶うことのない片想いに違いない。
 恐らく、義経は待っている。兄が自分を殺しにくるのを、息を潜めて待っているのだ。頼朝の猜疑心は義経の息の根を止めるまでおさまりはしない。だとすれば、恋い慕う兄の手にかかって果てるのが義経に残された最後の道なのだろう。それは、あまりにも哀しい心根であった。凛子は義経が哀れでならなかった。だが、愛する男がひたすら兄の差し向ける刺客を待ち続けている以上、凛子もまた義経の受け容れる運命に従うしかない。
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